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2017/5/11
ブックレビュー『グレン・ビルプのドローイングマニュアル』/Sony Pictures Imageworks 若杉遼 氏
Sony Pictures Imageworks(カナダ・バンクーバー)のアニメーターとして活躍する若杉遼氏が『グレン・ビルプのドローイングマニュアル』をレビュー。本書をオススメする理由を伺った。
若杉 遼 氏/Sony Pictures Imageworks(アニメーター)
2012年にサンフランシスコの美術大学AAUを卒業後、PixarAnimationStudiosにてアニメーターとしてキャリアを始める。2015年よりアメリカサンフランシスコからバンクーバーに移り、現在はSony Pictures Imageworksに所属。これまでに関わった作品は、「映画アングリーバード」、「コウノトリ大作戦!」「Smurfs: The Lost Village(2017)」など。
今回、『グレン・ビルプのドローイングマニュアル』の本のレビューを書かせて頂ける機会を頂きましたので、この本を買おうか迷っている学生さんや、絵を勉強中のアーティストの方々に対して、少しでもこの本の内容や感想をお伝えできればと思い、同じく”勉強中のいちアーティスト”としてレビューを書かせて頂きます。
本書をオススメする理由を教えてください
ドローイングの本は沢山ありますが今まで私が見てきた本は、基本的に絵の描き方やテクニックに重点を置いたものが多かった印象です。もちろん、それも悪い訳ではありませんが、自分が目指していたものとは違いました。
結局のところ絵を描くというのは、”どのように描くか”という描き方よりも、”どのように見るか”というものの見方が大切だと思います。アニメーター、イラストレーターはもちろん、CGデザイナーなど、どの分野のものづくりに携わるアーティストの仕事で一番大切なのはこの”観察する力”だと思います。
自分の中で特にグレンの本をオススメする理由としては、この本で書かれている球や円柱の描き方など本当にシンプルで簡単な基本的な形や手順を使い、この”観察する力”を勉強できる点です。グレンは、この本の中で常に”ルールはありません、ツールです!”と繰り返していて、この基本的な練習をすること”観察する力”も養えます。
例えば電車の中でスケッチしているとします。スマートフォンでゲームに熱中している子供がいて、この子供の熱中具合が面白くてスケッチしたいと思った時に、どのようにすればそのキャラクターが醸し出している雰囲気や印象、エネルギーを紙に描き出せるか、と考えます。ものを見たときに一番訴えかけてくるものがあるはずです。
その時にボリューム感を出す方法、プロポーションや手順など、この本で書かれているとてもシンプルで簡単なツールがとても役に立ちます。子供ならでは柔らかい感じや、エネルギーのある雰囲気などは、単純な球や線だけで十分表現できるからです。
自分で観察して、感じた印象に対して、どのようにそれを紙の上で表現できるかというツールを学ぶ事で、自由に柔軟に表現が出来るようになり、”観察する力”を鍛えることが出来ると思います。オススメです!
本書はどのような方にオススメですか?
この本は観察する力を鍛えるのにとても適しています。この観察する力は、どの分野においても、アートの基礎だと思います。なので、2D、3Dに関わらず全てのアーティストやデザイナーの方にオススメします。
特に3Dの勉強されていたり、仕事をされている方の中には絵を描くことが苦手な方もいるかもしれません(私も例外なく、CGの勉強ばかりしていたので、苦手です)。
ただし、実際に絵をつくるという意味では2D3Dどちらも大差ないと思います。3Dでも画を作るということに関しては全く同じです。結局のところ、いいものをつくる為にはいいものかどうか判断出来る眼、”観察する力”が必要不可欠だと思います。
この本で書かれている基礎的なツールを使って、毎日スケッチブックに絵を描いてみるのをオススメします。気づかないうちに自分でも驚くくらいスキルが向上しますよ。
若杉氏が描いたドローイング
若杉氏Twitter:https://twitter.com/Ryowaks
若杉氏インスタグラム:https://www.instagram.com/ryowaks/
アニメーションエイドTwitter:https://twitter.com/animationaid
アニメーションエイド公式HP:https://animationaid.com/
グレン・ビルプのドローイングマニュアル
3,456円(税込)